当科で掲げている大きな目標の中の1つに「遺伝医療の発展にリーダーシップを発揮できる次世代の専門家を育成すること」があります。(“遺伝科部長あいさつ”より)遺伝を基礎から正しく理解し、個々の患者様やご家族の福祉に貢献する。また、未来の日本や世界の遺伝医療と研究の発展に貢献できる若い世代を育成していくことも重要な使命なのです。 そこで当科では、遺伝医療の研鑽を積みたい、遺伝を基礎から勉強したいと願う若手医師に対して、当科開設当初から広く門戸を開いてきました。当科で研鑽を積んだ医師が各地の遺伝医療を担い、また新たな若手世代を育成していく遺伝学“教育”と遺伝医療の“発展”のスタート地点でありたいと願っています。
1. 研修目標
先天異常の発症メカニズム・自然歴を理解し、遺伝性疾患の診断と医療管理が実践でき、遺伝カウンセリングを含めたチーム医療としての遺伝医療を主導する能力を身につける。具体的な目標として以下を挙げた。
- 「臨床遺伝専門医」資格の取得(日本人類遺伝学会)
- 国際学会発表
- 原著論文(英文)発表
2. 年度別到達目標
臨床遺伝専門医到達目標(日本人類遺伝学会)に定められた事項を専門医取得までに研修することを基本とする。
3. 分野別到達目標
I.臨床遺伝
1,家系分析の理論および実際に習熟する
2,遺伝医学の教科書Thompson & Thompson, Genetics in Medicineを精読する
3,先天性形態異常の臨床診断に習熟する
・先天性形態異常の所見のとり方、記述法の習得
・発生学の概要の理解
・原因不明先天異常への診断アプローチ方法の習得
4,遺伝性疾患・先天異常の医療管理の方法を習得する
5,代表的な遺伝性疾患の遺伝カウンセリングの実際を理解する
6,遺伝疫学の基礎知識を習得する(特に先天異常モニタリングについて)
II. 遺伝学的検査・解析
1,染色体検査(各種分染法)の習得・実践
2,各種細胞培養技術(EBVを用いたリンパ球株化、皮膚線維芽細胞株の樹立、その他)とそれら検体の保存・搬送に関わる技術の習得・実践
3,基本的な遺伝学的検査(シークエンス、MLPA解析、HRM解析など)の解釈法習得
4,FISH解析(BAC clone DNAの精製とラベリングによるプローブ作製を含む)の習得・実践
5,マイクロアレイ染色体の解釈、レポート作成の習得
6,基本的なバイオインフォーマティクス研修(次世代シーケンスデータの解釈)
III. 研究発表
1,日本人類遺伝学会、日本先天異常学会、日本小児科学会、日本小児遺伝学会、日本遺伝カウンセリング学会などの全国学会で年間少なくとも2-3回(1年目は少なくとも1回、2年目は少なくとも3回)は発表する。国際学会発表をする。
2,原著英文論文を少なくとも1編は誌上発表する。
IV. 社会医療
臨床遺伝専門医制度細則(日本人類遺伝学会)に従い、学会参加・発表・論文発表などを点数換算し、2年の総合評価とする。さらに、実践的な能力評価として、2年目後期では、新患予診からその後の医療管理、遺伝カウンセリングを5例以上経験(主任担当医として)、研究課題の立案から発表までの組み立てが出来ることを目標として評価する。
V. 研修環境
1) 指導体制
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
朝 | 回診 | 回診 | 抄読会 | 抄読会 | 回診 | |||
染色体カンファレンス | ||||||||
午前 | 新生児 先天奇形 モニタリング |
再診外来 (科長) |
再診外来 | ゲノムカンファレンス | 全棟回診 新生児先天異常 モニタリング |
再診外来 (併診新患) |
||
午後 | 再診外来 | 併診新患 再診外来 |
併診新患予診 ・再診外来 |
院内カンフ ァレンス |
遺伝カウンセリング外来 | 新患外来 | 再診外来 | |
胎児カンファレンス | ||||||||
夕 | 遺伝科カンファレンス (毎週) |
レントゲンカンファレンス (月1回) |
遺伝カウンセリング カンファレンス (月1回) |
* ・・・週間予定の中でも特に主体的な準備が要求される
CW4000 (Leica)< FISH解析・一般染色体分析用>
PRISM310 (Applied Bio.) <シーケンス解析用>
DNAマイクロアレイシステム(Agilent) <マイクロアレイCGH解析用>
Verti Thermal Cycler(Applied Bio.)<PCR用>
Miseq(イルミナ)
など